人の造りしもの JetAlone
吉岡です。こんにちは。
エヴァンゲリオンTV版に,エヴァに対抗して開発された人型ロボット,ジェットアローン(JetAlone,以下単に作品中の呼称同様「JA」といいます。)の暴走を描くシーンがあります。
JAを造った日本重化学工業共同体が,エヴァを造ったNERVを散々にこき下ろしJAの優位性を説くのですが,肝心のJAが暴走してしまうという流れです。
一方,交通事故の賠償の世界でも,こんなことがあります。弁護士費用特約のお話です。
LAC基準といいまして,保険会社(共済会社)と日弁連との間で,弁護士費用特約の支払基準を定めたものです。当事務所ではこの基準に従って報酬等の請求をしています。
今回,JA(ここではJetAloneではなく,Japan Agricultural Cooperatives,いわゆる農協ですね)山口に対し,LAC基準で請求したところ,にべもなくそれは払えませんと。(異議申立後に非該当から等級を獲得した場合の後遺傷害部分の自賠責保険金を経済的利益に算出できるかというお約束の争点です。)
なるほど,確かに争点ではあるので,支払えない理由を聞くと,「払えないものは払えません。日弁連に聞かれたらいかがですか」とのこと。
LAC基準第2条4項「簡易な自賠責保険の請求」の範囲内というご趣旨ですかと伺っても,「うちの内部基準です。」と。その内部基準を確認させていただいてもよろしいですかと聞くと,「内部基準ですからダメです」と。
LACに加盟しておられながら,受任者や契約者も見られない内部基準でLAC基準以下の支払をされるとのことのようです。
しかも,その内部基準では,異議申立てをして等級を認められた自賠責保険部分は手数料をくれてやるとのこと(笑)。つまり通常の被害者請求では手数料すらもらえない。さすがにこの部分は担当者氏のミスリードか当職の聞き間違いだと思いますが……
どうにも埒があかないので,JA山口とLAC基準について共通認識を持とうと思い,LACの2条をご覧くださいと申し向けると,「LAC基準の資料は持っていないので,FAXで送って」。
LAC加盟共済がLAC基準も一切参照せずに天下のJAが定めた朕は国家なり基準でしか払わないと自供されました。孤高の俺が作ったものなんだからこれで突き進む,文句を言わずに従えと。これぞまさにジェットアローン,なるほどJAです。
ちなみにこのJA山口(旧東部)ですが,裁判時の訴訟基準差額説での支払確認の問い合わせに対し,「えっ??,人傷は人傷なので,裁判基準で支払えるわけはなく,人傷基準での支払いになります。」との対応を頑なに取られたこともあります。(この点は,当職がJA本部に照会し,担当者から無事に裁判基準で差額を支払う旨の書面での回答を得られていますので,今は大丈夫です。もっとも担当者を間違うと同じことの繰り返しでしょうから,事前に担当者に確認され,担当者を固定されることをお勧めします。)また,自賠責手数料方式の手数料は報酬と一緒にしか払いませんとのジェットアローン基準も鋭意運用されています。
ここまでくると,本件のご依頼者やこれからのご依頼者の方にも迷惑がかかることが明らかですので,一度ちゃんと整理しておかないといけません。そこで,JA担当者氏からここだけは適切にご指摘いただいた日弁連への問い合わせをしてみようと思います。(LAC調停)。顛末については後日報告予定です。
※後日,JA担当者及びその上席氏より,LAC基準での運用を理解し同基準での支払いを行う旨の回答がなされ,当職のLAC基準に基づく請求に応じていただきましたので,LAC調停には移行しませんでした。